妖怪独話
江戸の下町でのお話。
甲羅干しをしていた隅田川の河童、河太郎。
ぽかぽか温かい、春の陽気でうっかり眠りこけてしまった。
人には心地よい日差しでも、河童にとっては命取り。
起きたら、カラカラの干物になる寸前だ!
川まで帰る力もなく、息も絶え絶えな河太郎。
すっからかんの体力を絞り出し、弱々しくこう叫んだ。「た、助けてくれ!」
そこに通りかかった合羽売りの一商人。
哀れに思い、きゅうりを渡して、近くの川にかえしてやった。
河太郎は、何度も何度も振り返り、お皿頭を下げ川底に消えていった。
この出会いが江戸の窮地を救うことにになるのは、また後のお話で。
妖怪解説
河童という妖怪は、逸話が数多く存在するメジャーな妖怪だ。
其の中で河童の「河太郎」といえば、東京の道具街「合羽橋」のマスコットとして有名なアイツであろう。
合羽橋道具街の公式HP
http://www.kappabashi.or.jp/home/history.html
によれば、こういう由来がある。
曹源寺通称”かっぱ寺”に墓所がある合羽屋喜八のお話しです。今から約180年前の文化年間、合羽川太郎(本名合羽屋喜八)は、この辺りの水はけが悪く少しの雨ですぐ洪水になってしまうのを見かね、私財を投げ出して掘割工事を始めました。なかなか捗らない工事の様子を見ていた隅田川の河童達は、川太郎の善行に感動して夜な夜な工事を手伝ったそうです。そして、なぜか河童を見た人は運が開け、商売も繁盛したといいます。
合羽屋喜八は読んで字のごとく、合羽商人である。
現在の合羽橋付近に数店舗経営していたそこそこの豪商であった。
当時の合羽橋近辺は蓮田が多い湿地帯のような場所。河童も住んでいたと言う。
喜八は、子供にいじめられている河童をよく助けていた。
後にその河童は隅田川に住み着いたが、喜八が始めた治水工事が難航しているのを見るや、手伝ったという話らしい。
そんな妖怪との友情めいたものがあったとは、微笑ましい限り。
その治水工事現場が、合羽橋が架かっていた新堀川。今は地下にひっそり身を潜めてしまい、見る影もない。
二人の思い出だけが、未来に引き継がれているだけだ。
展示告知
2018年4月19日より、阿佐ヶ谷アニメストリート内にある大怪店にて、「河童の河太郎」のシャドーーボックスと絵はがき、グッズを展示、販売します。
ぜひ遊びに来てください!
●企画名:河童の河太郎展
●日程:2018年4月19日(木)〜4月29日(日)
●定休日:4月24日(火)、25日(水)
●時間:12時〜19時
●場所:大怪店
〒166-0004 東京都杉並区阿佐谷南2-40-1
阿佐ヶ谷アニメストリート内
050-5309-2219
アーティスト。 絵画、映像、イラスト制作やアートパフォーマンス、音楽活動しています。 最近は妖怪作家に転身。